著者は倉下忠憲さん。Amazonリンクはこちら。
他人に薦めやすい!
著者ご本人もポッドキャストで度々言及されているように、この本の主張は「記録をとりながら仕事をしましょう」の一言に尽きる。そして、これまたご本人がおっしゃっているように、ビジネス書に寄せた書き方をしている。
なので、主張はシンプルであり、文体も非常に読みやすい本だ。始めから終わりまで丹念に趣旨を追うというより、自分にとって関心のある部分をパラパラと読むだけでも効果がある本だと思った。
そして、読書猿さんの推薦文の「誰でもできて何にでも効くほぼ唯一の方法がここに」という言葉がその通りで、多少の向き不向きはあるにせよ、万人にとって効果のある方法を説明している。
つまり、主張がシンプル、読みやすい、万人に効果があるという点で、倉下さんの本の中でも抜群に他人に薦めやすい本という印象を受けた(ちなみに私は『すべてはノートから始まる』やメルマガのような話も大好きです)。
私にとっての本書はお守り
私は記録を取ることについては中級者くらいだと思っている。数年単位で日々の生活や仕事の記録はとっていて、たとえば「2年前の今日、何をしていたのですか?」と聞かれても、記録に残っているから答えられる。もちろん使い物にならない記録もあるけれど、記録をしていないと不安になるくらいは記録が習慣になっている。
そんな私にとって、本書に真新しいことは書かれていなかった。では、この本が自分にとって役立たないとか、何の意味も持たなかったかというとそんなことはない。むしろ逆だ。自分がやっていることは正しいと再確認できたし、困っていたところのヒントになったし、新たなアイデアも浮かんできたりした。これで1,760円なのだからお得すぎる。
ちなみに、最近読んだ本の中では、私にとっては『Chatter』 に近い位置付けだ。中身が似ているというより、お守りになる感じが似ている。『Chatter』はネガティブな内なる声がついつい頭の中を占めてしまって困ってしまうときにヒントになる本だ。この本も記録は取っているけれど、なんだかしっくりこない感覚があるときにヒントになる本だ。そういう意味で、私にとって非常に「役に立つ」本で、作業する机の上に置いておきたい本になった。
本書を読んだ後に始めたこと
自称中級者の私にとって本書で書かれていることは既に似たようなことをやっていたが、この本に影響されてログを丁寧語で書くようにしてみた。表現が違うくらいでそれほど影響ないと思っていたけれど、1日やってみただけで記録がだいぶ違う印象になったのは驚いた。
丁寧語で書くと、作業を始める前に宣言する感じが強くなって脱線しにくくなる感じがしてくるし、作業後は記録をわかるように書こう動機づけられる感じがする。行動を促し、見やすくなるということだから、いいことだらけだ。丁寧語で記録をとることについては、とりあえず今後も続けていこうと思う。
私にとってうれしい記録とはなにか
本書では、メリットではなくうれしいことをもとに記録をとりましょうということが書かれているが、記録を取ることで生じる私にとってうれしいことは、記録によってその日が再現できることだ。私は毎朝前日の記録を読み直すが、その時に記録を読み返すことで前日のことを思い出せるとなんとも言えない良い気持ちになる。役立たないけど良い気持ちになる。これがうれしいことだろう。
仕事でうれしいのは会議の記録をとっておくことだ。自分が中心でやっている仕事のことは記録なしでもある程度覚えていられる(もちろん記録はとるけれど)。だけど、自分が中心ではないけれど把握はしておかないといけない仕事のことはすぐに忘れてしまう。そういうときに記録がないのは非常に困る。厄介なことに、議事録を読んでも思い出せないから、結局は自分で記録を取っておくことが大事になる。本書を読み、早速会議が終わった直後に、いつもより念入りに事後のログを整理してみた。すると、なかなか良いではないかという記録になった。たまにしか使わないけれど、無いと困る記録は、私にとってうれしい記録になると思う。
日記は書けないがロギングならできた
小学生の頃の夏休みの日記が苦手だった。夏休みの最終日近くになってまとめて書くのが当たり前だった(覚えていないから嘘を書いて、嘘を書いていることに小さな罪悪感を持っていた)。大学生のころには「キラキラ」な手帳に憧れてほぼ日手帳を買ってみたりしたが、これも続かなかった。いわゆる日記は続かなかった。
そんな私が記録を続けられるようになった最大のきっかけは、リアルタイムで記録をとるようになったことだった。本書でいうところの「ログ」ではなく「ロギング」をするようになった。これによって私は記録を取れるようになった。いまだに、ロギングをせずに1日の最後にやったことを振り返ろうとすると、何も覚えていないことに衝撃を受ける。
つまり、私は日記が書けない(ログが取れない)のではなく、単に日記の書き方(ログの取り方)を知らなかっただけだった。そしてそれができなかったのは、それを教えてくれる人がいなかったから、あるいは取り方を提示してくれる人がいなかったから、またまたあるいは取り方を提示してくれる人と出会えなかったことにある。この本は、そういう昔の私のような記録が取れない人にヒントを与えてくれるだろう。
以上、つらつらと書いてみたが、良い本でした。本書をお供にしながら今後もロギングをしていこうと思います。