本書は五藤隆介(ごりゅごさん)さんのアトミックシリーズの2作目だ(Amazonリンク)。前作『アトミック・シンキング』で提示された「アトミック」の考えを読書に当てはめたものである。
前作同様、事前読みに参加させてもらった。発売されてからあらためて読み、読書メモを作り終えたので感想を書いていく。なお、前作『アトミック・シンキング』の感想はこちらに書いた。
本書は3部立てで、第1部は「いかにして読書をするか」、第2部は「読んだ本について書く」、第3部は「書いた読書メモを活かす」となっている。第1部は一般的な読書観とは異なる読書観を提示するために書かれていて、アトミック・リーディングの具体的なやり方は第2部以降になっている。そのため、「アトミック・リーディングとは何か」という話になかなかならない。しかし、それでいいのかもしれない。第1部を読んで、「自分もやりたい、方法を教えてくれ!」という気持ちになって、第2部、第3部を読んだ方がいい気がした。
本書は、読んで語れるようになる読書を推奨している。そして、そうした読書は単純に面白いというメッセージを書いている。ブックカタリスト読書会に参加している身としてはその通りだと思う。語るのは楽しい。
語れるようになることを目標とした読書のススメというのはあまり聞いたことがなく、一般的な読書観とは異なるだろう。それがもっともわかりやすく出ているのが読書の定義についてだ。一般的に読書は「書かれたものを読む」ことだと考えられている。しかし、本書では読書を「読んだり書いたりする行為」と再定義する。例えば、本を読むという行為に加えて、読書メモを書く行為も読書の一部だと捉え直している。言われてみれば、「読書」という文字の中には「書く」が入っているものの、「読む」ことにしか想定していなかったため、この読書の再定義には驚いたと同時に非常に納得させられた。
この読書の再定義は、読者に読書メモを作ってみようという気持ちにさせるだろう。私自身、読書メモを書くことは大事だと思っていても、つい読むことを優先してしまう。メモをする時間があるなら新しい本を読みたいと思ってしまうし、なんといっても読書メモを書くことはそれなりに面倒だ。そんな中で、本書の「書くことも読書のひとつ」というメッセージは、かなり響いたし、読んだ人に書くことを促すのではないだろうか。
一般的な読書観との違いは、並行読書のススメからも読み取れる。本書では、興味がある本が複数あるならば、同時に並行して読んでしまおうと主張する。並行読書の過程で、興味がない本は自然と読む時間は減るから大丈夫だと述べる。「そんないい加減でいいのか?」と思うけれど、ごりゅごさんは「それくらいいい加減でちょうどいい」と述べる。暗黙に持っていた従来の読書観に対して、もっといい加減でもいいと勧めてくれる。
本書で説明される読書は、ビジネスのために行う読書とも異なる。大人が本を読む動機として、成長のために読む、役に立つから読むというものがある。これ自体は悪いことではないが、本書で提示される読書はそれとは異なるものだ。ビジネスのための読書はコスパ重視だ。なるべく早く、大量に読んだ方がいい。でも、この本はそうしたファストに読んでいくことを推奨しない。真逆だ。少量でもゆっくりじっくり読んでいくことを推奨する。
ここまで感想を書いてみて、私は「アトミック・リーディング」が何かや、どうやるかより、この読書観の提示こそが本書のお気に入りポイントなのだと思った。こうした読書観で読む人が増えて欲しいとも思った。
本書が『アトミック・シンキング』の続編なのかどうかについては、この本自体がネットワーク的な発想で書かれているから、直線的な続編という位置づけではないのかもしれないと思った。続編とも位置づけられるし、並列とも位置づけられる。配置してみることで、意味合いが変わってくるアトミックな特徴を持っている本で、そういう点もおもしろい本だと思う。
おそらく今後出るアトミックシリーズによって、この本の位置づけもどんどん変わっていくのだろう。そして、気が早すぎる話ではあるが、そのうち元々あったアトミックシリーズも、「シン・アトミック〇〇」シリーズとして書き直されるだろう。私はそこまで期待している。なので、まずはどんどんアトミックシリーズが出ることを期待したい。